それを知っているからこそ、私は視線を逸らすように出されたお茶を一点に見つめる。

きっと私は酷く暗い顔をしている事なのだろう。

あれから1週間と数日経っている。淵くんとは連絡を取っていたものの、どこに行った。何を食べた。そんな内容だけで互いにあの日の事は明確に避けて、何となく会わずにいた。

京ちゃんとは私から連絡も出来ず、勿論京ちゃんからも連絡は来ずにいた。

つまり、何も変わらず現状維持を続けていた。

こんな所で足踏みをしていても仕方ない。そう思ってはいたのに、行動できていなかった。

この1週間、踏み出せない癖に縋るようにずっと携帯を手放しはしなかった。連絡来なかったらどうしよう、連絡来たらどうしよう。そんな不安が付きまとっていたのだ。

それが今日、帰省するのに忘れてしまったのは心の何処かで疲弊していて無意識の内に手放してしまいたくなっていたからなのかもしれない。

だってこんな離れた地なら何かあっても何も出来ない。それに安心を見出していたのだ。


「千花ちゃん、そんな顔で家に居るなら出て行きなさい」

「!」


強い口調に勢いよく顔を上げる。

そうだ、お母さんは何よりも明るい家である事を重んじる。

だからと言って、困った事や悲しいことがあっても何も無かったかのように笑顔で振る舞えと言っているわけではないのだ。


「あの……」


分かっている。けれど声に出せずにまた視線を落としてしまう。

何を言えばいいのか。何を相談したいのか。分からなかった。


「……ごめんなさい。ちょっと、出てくるね」