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「あらぁ?千花ちゃん駅から一人で歩いてきたの?言ってくれればお母さん迎えに行ったのに」


帰省して玄関を開けてくれたお母さんが開口一番発した言葉はそれだった。

のんびりと何処か間延びしたようなこの喋り方は春に帰省して以来なので久しぶりだ。


「スマホ、あっちに置いてきたみたいで」

「あらあら、うっかりさんねぇ」


なんてクスクス笑いながら「暑かったでしょう?冷たいお茶でも用意するわ」と家の奥に進んでいく。

家族へのお土産にと買って来たお菓子の入った紙袋を持ち直して、私もお母さんの後に続く。

家に踏み込んだ時に香るのは畳と木造の匂いで、これも久しぶりだななんて思った。