その感情は何だったかと考える前に、彼は情けなさそうに眉を下げて微かに笑った。
「ほんと、女々しいけど、ちょっと参ってたみたい。瀬戸さんが一番嫌な思いしてる筈なのにね」
「……」
そんな事は無い。誰が一番かだなんて語るのも馬鹿馬鹿しい。そう思うのにもう否定も肯定も、先に進む様な打開策も考えつかない。
誰かに何かをしてあげる。と言うのは簡単なようで難しい。それでも難しいようで簡単な事だった。
いつだって誰かの為と謳いながらも、私は自分の自己満足の為に行動していたにすぎなかったのだ。だから、こうやって彼を私が苦しめてしまっているのだ。
「――……私、淵くんに何が出来るのかな？」
それを痛感して、踏み込むことも出来ずに情けなくそう問いかけるしか出来ない。
彼はゆるりと首を横に振った。
「わかんない。分かんないけど……」
言いかけて、口は閉ざされて、グッと噛みしめられた唇から言葉は押し出される。
「瀬戸さんとずっと一緒に居たいって想いだけは本物だよ」
そう言って、彼は弱々しく笑って見せたのだ。
