莉子ちゃんとは大学入学当初からの付き合いだった為、およそ一年少々一緒に居る事になるのだろうか。
今まで天真爛漫で自由な言動が殆どで、こんな風に言う事など一度だってなかった。
いや考えてみれば、ここ最近の人間関係に置いては少しばかり意地悪な発言が目立っていたような気がする。
「……またカマかけ、かな?」
「んふふ、瀬戸ちゃんに関してはどうだろうね。でも、本心だよ。切り捨てて自分を守らないと馬鹿を見てばかりなんだから賢く世渡りしなきゃ」
「それは莉子ちゃんの体験談?」
パチパチと、瞬きをしたかと思えばまたニヤリと笑って見せる。
ころころと表情を変える莉子ちゃんは、どれが本当の彼女だったのだろうか。
「例えば……彼氏だった人が親友と付き合って二股掛けられてたけど、それでも円満に解決しようとしたとか?」
「……!」
「あ~~、嘘嘘。例えばって言ったでしょ。瀬戸ちゃんはもっと人を疑う事を覚えた方がいいよ」
表情を変えた私をすかさず止めて、困ったように眉を下げる。
だがしかし、そんな具体的な例え話を嘘で簡単に言えるものなのか。そう思うけれど、それ以上追及する事など彼女は望んでいないだろう。
現に話を切り替えるように言葉をまた投げかける。
「んで?瀬戸ちゃんはどうしたいの?自分が悪いって言うならこのまま我慢して、ずっとそんな顔してるの?」
「……」
このままでいい筈はなかった。
けれど、人と争うのを避けてきた私は、京ちゃんを怒らせた事のショックが大きいらしく、頭なんて回らない。
そして淵くんだ。理由があると聞き分けの良い事を口にはしたけれど、気にならない訳なんてなかった。何故、先に帰った彼がフラフラと歩いていて仁菜ちゃんと接触していたのか。
「……」
押し黙っていれば、静寂の中ポツリと莉子ちゃんが言葉を零した。
「……時間切れ。だね」
何を、と顔を上げれば人の気配がした。

