そんな私に対して莉子ちゃんは、詳しい話を促す訳でもなくシャーベットの最後の一口を放り込んで、残った棒を眺めた。
『……はずれ』と呟いた後に、ベンチの傍にあるゴミ箱にそれを投げ捨てる。
カコッと軽い音が鳴ったのを皮切りに結論を問う。
「そんで?一番悪いのは誰?」
「だっ、誰も悪くないよ!悪くない……悪いのは私で……!」
人を悪く言いたかった訳ではないと、慌てて訂正の言葉を口にする。
無意識に力が入った指先は硬い缶ジュースの感覚を捉えた。ヘコむことなく押し返されて指先が痛いような錯覚を覚えた。
「あらら、瀬戸ちゃんが悪いの?じゃーあ……」
「んむ!?」
「悪い悪い瀬戸ちゃんに制裁だよ」
ニィッと歯を見せて笑い、唐突に私の頬を両手で押しつぶす。
痛くはない、けれど手のひらが妙に温かい。
「私、あんま賢くないからさ~~、善し悪しなんか区別付かないけど、瀬戸ちゃんは誰も責められないんでしょ?だから自分が悪いなんて言うんじゃないの?前に言ってたみたいに」
「!」
そう言われて気づく。
彼と付き合う事になった次の日、莉子ちゃんと美咲ちゃんと例え話で語った話。
今にして思えばやはり机上の空論だったのだと痛感する。
話の差異はあるにしろ、仕方ない、自分が悪いと、同じような事を言っているのにやるせない気持ちで一杯なのだ。
私はどう足掻いても彼の言う『ヒーロー』や『神様』京ちゃんの言う『カッコいい千花』になんて成れないのだ。
こんなぐちゃぐちゃな感情をもった者は善であるはずがなかった。

