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息が切れて横っ腹すら痛くなっていた事に気づいたのは引いていた手が切る様に振りほどかれてからだった。
息苦しいはずなのに、大きく息をする事も出来ずに振り向けば俯いた京ちゃんが居て、彼女は何度も深呼吸を繰り返していた。
呼吸を整えるのすら何処か急いているように、ゲホッと一つ咳を零して間を開けずに声を落とした。
「……私、千花の事はいい子だと思ってる。本当に本当に大事な友達だって思ってる。誰にでも優しい所が一番好きだった。尊敬してた。それでも、それでも……!!」
京ちゃんの両手がギュウッと握りしめられて、予感した。
ああ、また傷つけてしまうんだと。
「――それ以上に今はそう言う所が大っ嫌い」
向けられた鋭い視線の奥には涙が浮かんでいて、堪え切れずに一粒落ちた。
綺麗に成されたメイクが涙に溶ける。
「自分が傷付いても抵抗すらしないなら、いっそのこと偽善者で良かったのに。そしたら千花の事貶して、罵倒して、泣かせてやるのに」
「……ごめんね」
「っ!!だから!それが……っ!」
嫌い。
と言いたかったのかもしれない。吐き出されかけた言葉はギリリと唇ごと噛み砕かれた。

