弾かれたように私の方を振り返って、目を見開いた。
「……何、千花。どうしてアンタが止めるの?」
「ち、ちがっ!!そうじゃなくて……!そうじゃ、なくて……」
怒る事が苦手ならば、険悪なこの雰囲気は嫌いだ。
突き刺すような空気感。体の芯から冷えて酸素が無くなっていくような感覚。抑え付けられるように苦しい胸。働かない頭は只の飾りだ。
「と、と、とりあえず、もういいから行こう?ふ、淵くんと……にな、ちゃんも、ごめんね……!!」
ありったけの力を込めて、握った腕をそのまま引く。
何がもういいのか。何が良くないのか。正しい選択はどれだったのか。
きっと、京ちゃんに怒らせてしまった事は間違いで、仁菜ちゃんに対して怖気づいたのも間違いで、淵くんの事を考慮したつもりでいたのも間違いだったのだ。
全部間違いだらけで何処からどう正せばいいのか見えずに、私は逃げてしまったのだ。

