「ねぇ、どうして貴女がそんなに怒ってるの?だってナナくんの彼女ってそっちの子じゃないの?」
「!」
また、私を見据える。
一言だってそんな事は言っていないし、怒っている様子だけを見るならば京ちゃんが彼女であると決めてもおかしくはない。
彼女でなくとも好意を持っているとか、そう思うのが妥当ではないだろうか。
これは直感だ。納得させられるほどの理由も根拠も何もない。ただ、そう言わなければならないと思ってしまったのだ。
心を殺すように、呼吸を浅くした。
笑えと心に命令した。
「――違うよ。私はただ、バイトが一緒なだけだから」
この言葉に彼は反応したのか、しなかったのか。
私の答えは正解なのか、不正解なのか。
そんな事はもう分からないけれど、パンッと乾いた音が街中に響き渡った。

