カッカッ、と鳴るヒールの音が何処か怒っているようにも聞こえた。
けれど、表情は引きつりながらも笑みを見せている。
「ぐ、偶然ね。こんなところで何してるの?」
「えっ、くる……」
驚いた様子を見せた彼は京ちゃんの名前を呼びかけて、でもそれに連想させたのか視線を京ちゃんから離して、此方を見た。そうして私の名を声に出さずに口元だけで呼んだ。
“瀬戸さん”と。
見られたくは無かったと言うように彼は顔を顰める。
「なーに?だぁれ?ナナくんのお友達?」
まるで牽制するかのように彼女は彼の腕にしがみ付いた。
「そっちこそ“お友達”と言うには距離が近すぎるんじゃないのかしら」
「だって友達じゃないもん。貴女と……そっちの貴女はナナくんに何の用かなぁ?」
スッと彼女の目が、冷たく変わる。丸い目がジッと此方を見据える。
比較的近くにいる京ちゃんではなくて、何かを見定める様に只管に私を凝視する。
「っ、」
蛇。それを連想させてしまう瞳に、足を一歩下げた。

