神様には成れない。



「そう言えば、夏休み京ちゃんは帰省するの?」

「ううん、夏休み無いから帰らない。冬になれば色々落ち着くだろうからその時かしら」


同郷の彼女とは同じ日に帰省しないにしろ、帰省している期間がかぶる為に地元でも何かと一緒にいたのだが、やはりどうやら忙しいらしい。

私も卒業する年、その前から忙しくなってしまうのかなと漠然と想像する。

けれど、先の事はその時にならないと分かりはしないので顔を上げてまた前を向く。向こうとした、が


「!」


背中側の肩に誰かがぶつかり、そのまま走っていく後ろ姿が見えた。

ふわふわと揺れるミディアムヘア、ひらひらと翻る淡い色のワンピースは夜の街でも良く映えた。

ぐっ、と京ちゃんに腕を引かれたのとぶつかった人の声を聞いたのは同時だったか。

どうやら、見知った人を見つけて走り出したらしい。


「ナナくん!」


甘く澄んだ声は何処までも人懐っこいような印象をもたらす。


「みな、がわ……」


でも何処か相手の柔らかい声と反発する、いや飲み込んでしまうような怖さも感じてしまった。

そう思いたかっただけなのだろうか。

彼女の先には淵くんがいた。