それを気にもせずにさらっと言うなんて、何たる天然タラシ。
恨みたくなる気持ちと妙な気恥ずかしさが入り混じる。
「ふ、淵くんあんまり他の女の子にそう言う事言うと、勘違いされるから気を付けた方がいいよ」
自分は例外かのように言ってみるけれど、実際は少しだけ浮かれている。
彼に関しては複雑な心情もあるけれど、好意を向けられるのは素直に嬉しいと思ってしまうらしい。
それでも入り混じった気持ちは注意する言葉に変換され、
「大丈夫大丈夫。俺普段女の子と遊びに行くことすらないから」
「えっ……」
まるで特別かのような言葉で押し返される。
「よし、決めた。花を見に行こう。瀬戸さんせっかく“千花”って可愛い名前なんだし」
「っ、うん?それは関係ないのでは?」
一々羞恥心を感じていてはキリがないのは学習したので、話の流れとはいえ、不意に名前を呼ばれた事に対しての感情は押し込めて平静を保つように努力する。
男女として淵くんと一緒に過ごすのはどうやら相当な精神力が必要なようだった。
顔が整っているだけに、良いように言われると心臓が高鳴ってしまうのは調子がいいけれど仕方のない事だと思いたい。

