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バタン、と扉が閉まる音が聞こえて目が開いた。

ぼんやりとした視界に映るのは知らない場所だった。だけど鼻先に当るシーツの匂いは私がよく知っているものに思えた。

何だっけ、この匂い。

ゆっくりと瞬きを繰り返しながら考える。

すると、部屋の扉が静かに開いて、これまた静かに閉じられる。

入ってきた人物は、Tシャツにジャージを履いていて、部屋着のようなラフな格好をしていた。


「あれ?起きてたんだ。おはよ、瀬戸さん」


声を掛けられてそれが淵くんなのだとようやく理解する。

そうして、この知った匂いは彼の物で、見知らぬ部屋は彼の自室で……


「っ!?」


そうだ。私はあのまま泊まってしまったのだ。

理解してから飛び起きれば、「うわっ!?」と驚きの声が上がった。


「どうしたの?」

「なっ、何でもない!」

「そう?」


妙に裏返ってしまった声は、昨日の夜を思い出してしまった証拠で私は身を縮めるようにベッドの隅に三角座りした。