「いっ?!」


痛い。と感じたのはその衝撃の後で、じわじわと痛みが押し寄せた。

何が起こったのかは分からなくて、ただただ額が痛いと言う事だけ理解をしていたのだが、何度か瞬きを繰り返している内に何が起こったのかを知る。

端的に言ってしまえば私の頭と淵くんの頭がぶつかったのだ。それも容赦のない勢いで。


「っ、っ〜〜!」


じんじんと痛む額を抑えて頭を左に動かせば、そこには淵くんが居て、明らかにさっきの倍以上の体重が掛かっている事から意識がない事が分かる。

いいや、意識がないなどと不穏な事は起こってなどいない。


「急に寝る……?」


規則的な呼吸と開かれない目から、寝てしまったのが分かった。

いやいや、万が一と思って浅い知識で彼の様子を伺うのだが、脈も正常で顔色も悪くはなさそうだ。それに穏やかでやはり寝ているようにしか見えない。

ホッと息は付くのだが、落ち着ききれない心臓がそこにはあった。

寝てしまったのなら帰ろうとも思ったのに、寝ているとは考え難い力で私の手を離してくれなくて、それがなんだか引き止められるように思えてしまって、離れがたい。


「……淵くんのせいだからね」


本当はそう思いたかっただけなのかもしれないけれど、彼の所為とかこつけて、私は瞳を閉ざしたのだった。