神様には成れない。



「え?え?」


様子が変わった彼に困惑してしまい、考えていた事は吹き飛んでしまう。

嘘を吐いていたのだから咎めるべきである事は分かっていたのだが、普段から怒ったりするのが苦手な事もあり踏み切れなかったのだ。

それに、傷つける程の悪意を持っているわけではないと思っていた。いや、持ってはいないだろう。

ただ、真意が分からないだけだ。


「俺の我儘に付き合う必要なんかないんだよ。嫌なら怒ればいいし、何でも許そうとする必要もないんだから」

「……嫌な事はちゃんと嫌って言ってるつもりだけど」

「どーなんだろうね」


そう言う彼の方こそ怒っているのだろうか。曖昧に笑って見せて、歩むことを止めなかった足が一瞬止まる。

静かな電動音がしたと思えば、開いたのはエントランスの自動ドア。気が付けば彼のマンションに到着していたのだ。


「……ほら、鍵開けて」