佐伯くんの性格なら、笑いながらそのメッセージすら受け取るだろうと信じて。淵くんの性格なら、次の日にまた改めてお礼を述べ直すだろうと確信して。
私はこの二人のやりとりに関与せずに彼の家までの道を歩き始めた。
手を繋いだまま。
いつもなら、多少なりとも気恥ずかしさはあるのだが、今日の彼の言動がおかしいせいもあって此方としてもこの方が安心さえするのだ。
言ってしまえば保護者気分だろうか。
とは言え、足取り自体はしっかりしていていつも通り私の歩幅に合わせるように歩いていた。
隣を歩く彼を見れば険しい顔をしているわけでもなく、先に項垂れていたように辛そうな表情をしているわけでもなく、ただただニコニコとしている。今にも鼻歌を歌いだしそうだ。
「……何だか楽しそうだね、淵くん」
「ん~~?俺瀬戸さんと一緒なら何でも楽しいよ」
只々一緒に帰っているにすぎないのだがそれすらも楽しいと言いたいように、へへっ、と笑ってみせる。
「そ、そっかぁ」
彼は普段からストレートに言葉を言うような人だけれど、今日は特に感情に素直で、警戒心と言うものが薄くなっているような気がした。

