神様には成れない。



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「淵くん、私が送っていくから帰ろう?」

「あれ?佐伯は?」

「帰ったよ」

「ふぅん……」


結局声を掛けないままに帰って行ったのだが、彼はそれにすら気づいて居なかったらしい。

男の子が友達と別れる時は、案外さらっとしているんだななんて思いながらも私は手を振って見送ったのだ。

ふと、彼は徐にスマホを取り出して画面をスワイプさせだした。


「何してるの?」

「佐伯にお礼言っとこうと思って」


興味なさげに返答した割に何とも律儀だ。

この間は大人しく待っていようと彼の隣に座ろうとしたのだが、そこには手元で遊ばれていた空のペットボトルが転がされている。

ゴミ箱は近くにあるし、待っている間にこれを捨ててこよう。と、手に取り踵を返そうとした所で


「へ……?」


くいっと引かれる手。温かい感触が私の指の間に潜り込んでくる。

驚いて引かれた方を見れば彼の手が私の手と繋がっていて、その相手はへらっと笑みさえ見せていた。


「それ捨てて帰ろ」

「う、うん。もういいの?」

「ん。ほら、ちゃんと送ったから」


と、画面を隠すことなく見せてはくれるのだが


「……」


そこに打たれた文字は、お礼と謝りを伝えようとしているのが辛うじて推測出来る程の酷い誤字の羅列だった。

どうやら彼は重症らしい。