『あ!番号は莉子ちゃんに聞いた。流石に友達だろうと淵の携帯見るのは気が引けるし』


私の疑問を消すように先回りして手短に事の詳細を話す。

まるで急いでいるかのようにすら聞こえた。

けれどそうか。莉子ちゃんから入っていた一つの連絡はこの断りか何かだったのかもしれない。

ともあれ。


「わざわざ電話くれるって何かあったの?」

『何かってほどの事じゃねぇんだけど、淵が酔っててさー』

「酔って……?お酒飲んでたの?」


彼は20歳になっているので飲んでいようと咎める事はしないけれど、何となく想像が付かなくて戸惑う。

潰れるほど飲んだのなら、それはそれで問題なのだが。


『飯の延長戦でちょっとなぁ……』

『だから、俺酔ってないからその辺に転がしとけって』


困ったような声が上がったかと思えば、割って入る淵くんの声。

酔ってると言うからには、陽気だったり寝ていたり呂律が回りにくかったりするのかと思っていたのだが、聞こえてくる声は普段と何ら変わりはない。

ヘルプの連絡かと思いきやそうなってくると、私に連絡してくる意図を計りかねる。


『転がしとけって普通に家帰れよ。送ってってやるからさぁ』

『鍵無くしたっつってんじゃん』

『無くしたのは災難だけど大家さんに言ったら開けてくれるだろ?』

『……』

『う〜〜わ、今度はだんまりかよ』


大きく溜息を吐いて、唸り声を上げる。

どうやら、話を聞いていると彼の扱いに困っている様子だ。

いくら男の子と言えど、言葉通り放っておくことが佐伯くんにはできないのだろう。


『ずっとこんな調子だけど、千花ちゃんはスペアキー持ってるって言ってたから悪ぃけどちょっと助けてくんね?』

「う、うん、分かった。今どこ?」


私とて彼の事が心配だ。

居場所を聞いてすぐに歩き始めた。