それから一時間も経てば喉が渇きを訴え始める。

飲み物くらい鞄に入れておけばよかったと思いながらも、少し離れても大丈夫かと考える。

学内のコンビニに行くよりも、飲み物だけなので横断歩道の先にある自動販売機で事足りるだろう。

それに、行き交う人が少ない今、私が離れても淵くんが来ればすぐに校門にいるのも確認できるだろうし、彼だって周りを見渡せば私を見つけてくれるだろう。


「うん。そうしよう」


そうと決まればと、丁度信号が変わった横断歩道を渡ろうと数歩歩き出した時だった。


「っ、せと、さん!!」

「えっ?!」


叫びにも似た声に力強く引っ張られる手。

私は今だって昨夜の事を鮮明に思い出せる。

手の感触も温もりも私を呼ぶその声も。


「淵くん……?」