少しの悔しさを抱えながら私は漸く手を合わす。


「何と言うか……きちんとカップルみたいな事をするんですね」

「へっ!?」


お味噌汁が入ったお椀を持ちながら、淡々とした口調で不意に呟くものだから、私は手にしたお箸を危うく落としそうになる。

彼は動揺する私を余所に気にしていないかの如く、ご飯を口にしていた。


「いえ、深い意味は無いのですが、よく分からない、いちゃつきを見せられた気がしたので。そう言えば恋人同士だったのだと今更」


そんなつもりは微塵にもなかったのだが、そう見えてしまったのなら、月乃ちゃんの立場的にも気まずさがあっただろう。

また申し訳なさを感じたのだが、彼女を見遣ればそんな事を気にしている風でもなくお味噌汁を啜っている。


「あ、月乃!人差し指!!」

「む……!」


指摘するように何かに気づいた彼は声を上げる。

ふと彼が言う月乃ちゃんの人差し指を見ると、持ち方が少々独特で、人差し指がお椀の縁に引っかかっていた。

しまったと言うようにいそいそと持ち方を正しく直して、何事もなかったかのようにまた食事を再開する。