「あまり気にしなくてもいいですよ。兄は自分が焦がしても私が失敗してもそっちを食べるので」


と、良くある光景だと言いたげに月乃ちゃんはしれっとしていて、彼女もまた「いただきます」と手を合わせる。

いや、でも、しかし、口に入ってしまうと自分の失敗が大いに露見してしまうのだから私としては居たたまれなさが押し寄せる。


「ご、ごめんなさい……」

「う~~ん?月乃の言う通り気にする事じゃないと思うけど。それにほら、二人とも苦いの嫌いでしょ?俺は平気だし、これだって全然美味しいから」

「うぅ……」


いつだって彼は優しくある方に動くような人だけれど、今ばかりはその優しさが痛い。


「……そんなに嫌なら交換する?」

「す!す……」

「お箸付けちゃってるけど」

「!!」


見兼ねた妥協。かと思いきや私が気にする所を上手い具合に突いて、その実自分は譲る気はない。

どうにもならない事は、どうにも出来ないのだと実感するしかない。

確信犯の如く口元に弧を描いて今一度


「どうする?」


なんて問いかけてくる。

そんな風に問われてしまえば私は、俯く他手段などないのだ。


「やっぱり、いい……」