神様には成れない。



そんな様子を他人事で離れた所で私は見ていた。

そうしている間にも、女の子たちは逃げるように去っていき人混みに紛れてしまう。

とは言え、小さいお祭りだからまたすれ違ったりするんだろうなぁ、なんて、どうでもいい事を考えていた。


「びっ……くりした。誰かと思った。どうしたのその格好、似合ってるけど」

「……千花さんに着付けて貰った。あと、髪も千花さんの友達にしてもらった」


ぶっきらぼうな物言いをしながら彼に見せるように、クルリと一回転してみせる。

どうやら気に入ってくれているようだった。


「へぇぇ……瀬戸さん着付けできるんだね、凄い。瀬戸さんもよく似合ってるよ」

「あ、ありがとう」


さらりと言葉を溢し、不意打ちに笑みを向けられてどきりとする。

先までの冷たい視線などなかったかのようにへらりと笑う彼は私のよく知る彼だった。


「でも月乃浴衣持ってたっけ?」

「あ、それ私のなんだけど、無理矢理着てもらったの。髪はあまり得意じゃ無いから京ちゃんにお願いしたんだけど」


かくいう私も朝に自分なりにセットしたのだが、走ったのも相まって崩れてしまっていて、京ちゃんに「あり得ない」と言われながらセットし直してもらっている。


「強引で頑固な所なんて兄そっくり。それよりも、早く行きましょう千花さん」


嫌味のような言葉を投げながら月乃ちゃんは先に歩き始めてしまう。

そんな言葉に気を悪くするわけでもなく、むしろ微笑ましくなってしまう。

ここに来る前は頑なに拒否していたのに、ここに来ると開き直ったのか何も言わずに普通に接してくれる。

彼女はあまり素直な性質ではないらしいのだ。


「ご、ごめん。月乃気まぐれで扱いづらい子で、でも悪気があるわけじゃないから許してあげてくれないかな?」

「ふふ。淵くんが気にしなくても大丈夫だよ。私は気にしてないから大丈夫。ほら、それよりも早く行こう?月乃ちゃんに置いて行かれちゃう」


私を気にして、月乃ちゃんに対して兄の顔を見せる彼が新鮮で、それが嬉しい気持ちに変化する。

また、新しい一面が見れた。なんて。