神様には成れない。



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「ほんっと、変な人ですね」


もうすぐ待ち合わせ場所に着こうかという時に、彼女は悪態を付くように零す。

少々強引にしたために怒っているのかと思いきや、そう言う訳ではないのは、少しだけ嬉しそうに見える事から伺える。


「変な人でもいいよ」

「変な人でもいいんですね……」


呆れたように言い、彼女は前に向き直る。

そうして、探すように辺りをキョロキョロと見渡す。


「兄の事だから、適当に指定してもよく分かる場所に居ると思うのですが」

「それだったら、神社の入り口とかにいるかな……あ、いた……あれ?」

「どこですか?」


私の視線を追うように彼女も同じ方向を見る。

鳥居の下に彼は立っているのだが、人がそこまで多いわけでもないのに月乃ちゃんは見つけれないようで、何度か視線をあちらこちらに彷徨わせる。


「ああ、あれですか」


漸く見つけたかと思えばやけに冷めたような声色で言い放つ。

言ってしまえば軟派現場に遭遇してしまったと言う所だろうか。

何処に行っても視界に入れば目を止めてしまう彼は、数人の女の子に囲まれていた。こんな場所、こんな日だから余計にそうなってしまうのだろうか。

私としてはその事に関しては、少しだけいい気はしないのは認めよう。しかし、疑問の声を上げてしまったのはいつもの雰囲気とは違うからだ。

困っている、にしても違う。どこか冷めたような目を女の子に向けて拒否するように首を何度か横に振っている。


「顔がいいだけで釣れるなんてチョロイですね」


誰かを、彼を、いいや、女の子を馬鹿にするように同じような冷たい目を向けて呟いたかと思えば、カランカランと足音をわざと大きく立てて、女の子の肩をぐいっと掻き分けた。


「私の兄にあまり構わないでもらえますか?あっちに行ってください」


話の途中だろうと構わない。ぶった切るように辛辣に言い放つ。

女の子たちは月乃ちゃんのキツイ言いように反論もできず、戸惑うように友達同士で顔を見合わせていた。