「……」
「……」
通話が切られたスマホを手に持ったまま、彼女は無言のままに私を見つめる。
切った事に意を唱えたいのか、はっきりしなかった私を責め立てたいのか。
しかしながら彼女は、この事については何も言わずに立ち上がった。
「……じゃあ、私は帰るのでちゃんと行ってくださいね?」
「まっ、待って違うよ!月乃ちゃんも一緒に行くんだよ!」
「いえ、行きませんが?」
何を言っているんだとすっぱり切り捨てられる。
違う。私はこんな風に押し付けられるのが嫌で、ましてや自分は引くような行動が嫌いなのだ。
そんな、邪険にするような事をしたくない。
「行くんだよ」
「……何故、妹が兄の恋人とのデートに参加するのですか?」
ほら、やはり彼女は妹である事を一番に出す。むしろ妹である事に徹底しているように思う。
それについては先に言った事を二度言うのはくどいだろう。だから
「私は今日月乃ちゃんに付き合った。だから今からは私に付き合ってもらうの」
「――……変な人ですね。偽善かと思えば、そんな交換条件みたいな悪い事を言い出すなんて」
「それは淵くんにも言ったよ。私、誰かが思うよりも自分勝手なんだから」
ニッコリと笑って見せれば彼女は諦めたように、大きくため息を吐いたのだった。

