神様には成れない。



「……」


今日来ていた部員が今日に限って浴衣だったのはそう言った理由が確かにある。

浴衣でも着物でも気にしていないと思ったけれど、彼女は彼女なりに気にしていたのかもしれない。いいや、結びつけるには簡単な事か。


「行かないんですか?兄とかと」

「淵くんは……誘ってなくて」

「何故です?」

「何故、と言われても……」


言及するように言われて、困ったなと思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「女の子はいつもと違う服を着ると、誰かに見て貰いたいものだと思うのですが」

「そ、そうだね」


その気持ちがないとは言い切れずに、そして彼女の勢いに気圧される様に頷く。


「では……ああ、もしかして、私が来たからでしょうか」

「えっ、ううん!それはないよ!」


確かに昨日誘おうと思ってはいたのだがタイミングを逃したのは私で、連絡可能だったのにも関わらずしなかったのも私だ。

しかし、彼女は言ってのける。


「いえ、別に私のせいでもいいんです。それよりも、このまま帰るんですか?」

「そうだね。月乃ちゃんを送って行って……」

「そうですか。分かりました」


肯定を聞くなり、言い終わらない内に彼女は頷いて、徐にスマホを取り出した。

画面を操作して鳴り出す音は呼び出し音。私にも聴こえる事からどうやらハンズフリーにしているようだ。


「??何して……」

『はい?どうした?』


応答する声は、紛れもなく彼の声。