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「茶道……ですか」
ポツリと呟いて、興味深そうにまじまじと私の手元を見ている。
背筋を伸ばして正座をする彼女は凛としていて、私なんかよりもこの茶室の雰囲気に合っている気さえする。
「うん。今日は簡単にしか出来ないけど、小さい頃からやってて好きなの」
「へぇぇ」
感慨深げな声を上げて丸い目を動かしている。
私の事を知ってもらうために、興味のないオープンキャンバスだとは言っていたけど簡易的なサークル見学のつもりで構内の茶室を使わせてもらっている。
「でも、いいんですか?今日こんな事して」
「うん。大丈夫。ちゃんとした活動自体は部員の都合でどうしても不定期なんだけど、皆勝手に好きな時に自主練って言いながらお茶点てたりしてるから」
オープンキャンバスですら宣伝するほど部員を募集しているけれど、真面目かと言えば活動自体は緩いのが、この大学の茶道サークルだ。
学業を主軸に置いているので、これくらい緩くしていないとやってはいけないのが要因でもあるのだが。
「文化祭ではちゃんとしたの出すから良かったらお友達とか、淵くんと一緒に来てくれると嬉しいな」
「そうですね、きっと。……ところで、私こういうの初めてなので作法が分からないのですが」
「あ、ううん。作法も大事だけど今日はそう言うの気にしないで飲んでくれたらいいよ。興味があればまた次の機会にでも教えれるし」
「そうですか、じゃあ、いただきます」
と、月乃ちゃんがお茶を口にした時、徐に茶道室の扉が開かれた。
「わっ!ごめんなさい!人居ると思わなくて!」
開けると同時に鈴の音のような声が上がる。見れば今日手伝いをしていた部員だった。

