対する彼は私が割って入った事で頭が冷えたのか、いつもの様子を取り戻す。


「……ちょっと俺も言い過ぎた。月乃が決めたらいいよ。俺ん家に泊まるか、言葉に甘えて瀬戸さんの家に行くか。それでもどっちも嫌って我儘言うなら、今から実家帰るからさ」


そう言って出されなかった妥協点をもう一つだす。

考えてみればそれも出来てしまうのだ。頭が回っていない状態ではそれも見えていなかったのだ。

月乃ちゃんは顔を俯かせて、自身の毛先を撫でつけた。


「人の事ばっかり……」


ぽそっと呟いたかと思えば、勢いよく顔を上げる。


「分かった。大人しく予定通りにする。でも、一つお願いしてもいいですか?私と明日、大学のオープンキャンバスに行ってください」

「はい??」


何と言われたのか分からずに首を傾げる。

そんな私を諸共せずに、無表情のまま続ける。


「勿論、瀬戸さんが良ければ。ですけど。さっき言ったように瀬戸さんとお話したいと言うのも嘘じゃないんです」

「えっと……」


まさかそんな提案をされるとも思っていなかったので、戸惑いを隠せない。

断る道を残していてくれているものの、何故急にそんな事を言われるのか分からない。泊まりに来たのもオープンキャンバスに行きたかったからなのだろうか。

しかし、


「私も、明日自分の大学のオープンキャンバスあるからちょっと手伝い行かなくちゃいけなくて……」


明日の予定の一つがそれだった。手伝いと言っても、基本的にキャンバス内にいるだけで、終わる頃には帰るのだが。