「そうだね、だって瀬戸さん俺に言ってくれたもんね“分からないなら共有すればいい”って」

「――そうだよ」


傷は簡単には癒せない。

けれど確かに私の言葉は届いていたのだ。彼は私の言葉を覚えていてくれた。

その事を知って単純に嬉しい気持ちが沸き起こる。先に渦巻いた嫉妬心を簡単に飲み込んでしまう。

ああ、そうだ。

一人で何かを思ってしまうから連鎖のように沈んでしまう。それなら二人で解決すればいいのだ。


「瀬戸さん、俺を好きって言ってくれてありがとう」


私の腕を緩く掴んでいた左腕を伸ばし、行き場を失っていた右腕を持ち上げる。

受け入れるように彼は私を抱きしめ返して、心音に溶け込むくらいにまた小さくありがとうと呟いた。

心を共有した分、足りない部分を言葉が補ったかのような気がした。