「う、うぅ……っ~~」
恥ずかしさから唸り声を上げるも、彼はそこから動くこともなく、静かに呼吸だけを繰り返してた。
何故。何で。急に。どうして。
疑問を浮かべながらも、こうして触れる理由が今やあることを思い出す。
いや、でも彼は……
と考えたところで気づく。
「――……」
耳に聴こえる彼の心音はずっと一定なのだ。
ドキドキしそうだなんて言いながら、平常時と変わりはしない。
それは最初に言っていた通りなのだ。
「ごめんね。瀬戸さんに対してじゃ逆効果かな」
「何、が?」
まだ激しく鳴る心臓を抑えて締まる喉から声を出す。
彼は右手を私の頭に乗せてあやす様に頭を撫でる。以前にもそうされたけれど、彼の癖だろうか。
少しだけ落ち着く。
「何となく今日は変だったから、何かあったならこうしたら落ち着くかなって思って」
「え……」
変だと気づかれていたが、そこまで気にしてくれていただなんて思いもしないだろう。
逆に言えばそこまで気にする必要などないのだ。
だって、これは私の問題であるのだから。
「う~~ん。やっぱり自分の基準で物を言うもんじゃないね」
ごめんね。ともう一度謝って、腕に籠っていた力を緩める。
解放された体は急速に冷えて、何故だか寂しささえ覚えた。

