神様には成れない。



顔を上げて彼を見上げれば目が合い、にっこりと微笑まれる。


「う……」


やはり顔立ちが整っているだけに、目を奪われる。

これをお客さんとして受けている子たちもきっとそうなのだろう。

ずるい。などと思うけれど、納得さえしてしまう。

気を奪われるのも当然だと思ってしまう。


「さて、本題だね」


私の落ち着かない内心とは裏腹に軽い声を上げて、目の前に膝を立てて座る。


「??」

「はい。腕広げて」


何故私の目の前に座るのか理解が及ばない私に、同じようにしろと言うように両腕を大きく広げて見せる。

私も真似して腕を持ち上げてみる。


「こう……へっ!?」


そうやって腕を広げるや否や彼はそのまま私の両腕を引き、自分の胸の中に引き寄せた。


「なん?!何っ!?」


突然の接触にパニックを起こさないはずがなく、私は彼に抱きしめられている状態にも関わらず身じろぎをして声を上げる。

すぐに状況を理解しただけにバクバクと一気に心臓が大きな音を立てて、熱が内側から沸き起こってくる。

ふわり、と花のような香りが鼻孔をくすぐった。


「あーー、じっとしてて。何もしないから」

「何もしなくたって……っ!」


意識をしないわけにはいかないだろう。

背に回る手の感覚をはっきり感じる。ドクドクと脈うつ音が聴こえる。彼がすぐ近くにいる。

温かい。熱い。くらくらする。


「ははっ。すっげー心臓ばくばくいってんね」


僅かに潜めた耳を擽るような声が、ゾクゾクと全身に駆け巡った。


「あた、当たり前、じゃない……!」

「――……ね。俺もドキドキしそー……」


すぅっと、彼が深呼吸をした。