神様には成れない。



「こずえ、さん?」

「あ、梢さんは俺のお婆ちゃんで、ボケちゃってから俺の事孫だって認識しなくなったから名前で呼んでたんだよねぇ」


拾い上げられた言葉に返答がされる。

彼はマグカップを二つ、手に持って此方に戻ってきた。

立ち尽くしたままになっていた私に座る様に促すかのように、テーブルの対面に一つのマグカップを置く。

「ごめんなさい」と無意味に謝りたくなるも、ぐっとこらえて彼の対面に座った。

聞いてはいけない事だったなら、聞こえなかった振りだって誤魔化しだってした筈だ。ちゃんと答えをくれた彼に謝ってしまえばそれこそ失礼だ。


「――……淵くんは、お婆ちゃんが好きだったんだね」

「ん~~、ハッキリ言うと照れるけど、やっぱり居なくなって結構寂しかったんだよね」


今は持ち直した、と言うように自嘲気味に笑い、彼の近くをウロウロと彷徨っていたシャルロットを引き寄せる。


「寂しいと思うのは普通の事だよ」

「それでも俺だって男だからね、情けない事は言いたくないものなの」


少し拗ねたように言う彼がどこか可愛く見えてしまって、笑みが零れる。


「淵くんが言ったのに?」

「……それもそうか。よく分かんないけど瀬戸さんの前だとついつい喋っちゃうみたい」


それは気を許してくれていると受け取ってもいいのだろうか。