私の感情など理解できるはずもなく、目を丸くし、キョトンとした表情を見せる。
「俺、自分で言うのも何だけど、割と器用な方だと自負してるんだけど」
「ふふっ。そうだね。淵くんは私と違って変なミスは全然しないもんね」
「あれ?馬鹿にされてる?」
してないよ。と笑いを零しながら返すと、彼は納得がいかないかのように少しだけ唇を尖らせた。
本当に器用なら騙そうとも上手く他人を使ってしまえば良いのだ。だからやはり彼の生き方が不器用だ。
僅かに指先に力を込めて、口にする。
「私は淵くんのお願いは受けれないよ」
私だって同じ事だ。器用になんてなれそうにない。
「……そっか」
だから、そんな彼に問いを返そう。
不器用だから新しい切り口を作ってしまう事を許して欲しい。
「だから……」
今一度淵くんの手を少しだけ強く握り、ゆっくりと瞬きをする。私を後押しするかのように木々が揺らぎ、風が頬を撫でた。
「――淵七斗くん。私と恋する事前提に付き合ってください」
生まれて初めて受けた告白を生まれて初めてする告白で返答する。
それが私の答えだった。

