さて、どうしたものか。

と、考えながら紙がぐしゃぐしゃにならない様に、手帳型のスマホケースの内ポケットに入れて置く。

あの後も彼と話す機会があったのだが、渡すまでには至らなかったのだ。

“好きになるのは仕方ない”と、莉子ちゃんとの話で言ったのは私だった筈なのに、いざその現実に直面するとなると困惑してしまう。

ましてやそれが此方の手の内にあるのだ。


「う~~ん……」

「おーーい。瀬戸さん、聞いてる?」

「へっ!?な、何か言った?!」


思わず考え込んでいたけれど、今はバイト終わりの帰り道で、気が付けば上の空の私を彼が覗き込むようにして此方を伺っていた。

何の話をしていたか思いだそうとしても、耳に音が入っていなく機械的に歩いていた為、思いだせる筈もない。


「ほら、俺ら六月のシフト見事に一緒の日殆どなかったから、休みの日何処か行く?って」


そんな私を怒る風でもなく再び問いかけてくれる。

因みに今は五月で、二人重なるシフトが最後の日だったのだが、彼が歩きながら差し出してきたシフト表を見る限り次会うのは随分先だ。

放っておけばずっと会わない。なんて今は会う理由もあるのでそんな心配もないけれど、約束をしておかなければ同じ事だろう。