知りたい。と言ったのは私だったけれど無理にどうこうと言う訳でもなかった。

しかし、パッと渡された話題はそのまま受け取るには少々反応に困るものだった。

しかし、このまま黙ってしまえばどんどん意識をしてしまうだろうことは容易に想像出来たので、苦し紛れにまた言葉を投げかける。


「そっ、それは光栄な事だね……!?」

「ふっ、くくっ、そんな大仰な事じゃないけど」

「……!!」


また笑われてしまった。

確かに言葉選びを間違った事は認めるけれど、今日は何度も笑いすぎている気もする。

ならば、ちょっとだけ皮肉を言ったって許されるだろう。


「……何だか今日は一段と楽しそうだね」

「う~~ん?」


と声を出しつつ、ふふっとまた微かに笑っては私より大きく一歩を踏み出した。


「俺だって、瀬戸さんが彼女になった次の日くらい浮かれるんだよ」

「っ!!?」


危うく何も無い所で転びそうになった。

彼がどんな表情をしてそう言ってくれたのかは、私の先を歩いてしまった為分からない。彼の背しか見えない。

その表情を間近で見たかったなと思うけれど、きっと今より私の表情は更に緩んで酷いものになっていただろう。


「あ、照れてる」

「てっ!てれ、照れてないよ……!」


悪戯めいた表情で此方を振り返った彼は、やはりいつも通りで少しだけ悔しくなった。

どうやら私は、まだまだ敵わないらしい。

それでも、案外単純な事で浮かれる普通の男の子なのだと知れた今日は、良い一日だった言えるだろう。