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そんな些細な引っ掛かりなんて直ぐに忘れてしまうような、いつもと変わらない何でもない日常だった。
なんて、ふとした時にソワソワと彼の事を思いだしたりしているのだから、実際は上の空に近い状態だったのかもしれない。
私としては気持ちだけが、落ち着かないと思っていたのだがバイト先でも顕著に表れていたらしい。
「瀬戸さん、今日は何か用事があったりする。んすか?」
「ううん?今日は上がったら普通に帰るけど」
「れ?そうなんすか?今日時計気にしてるような気がしたんで」
と、今日シフトが同じ、年下の男の子に言われる始末なのだ。
答えた通りに今日のこの後の予定などは何もないし、特別に時計を気にしていたつもりもない。
普段のバイトでも、時折終わりまでの時間を計算するのに見る位で今日もそれくらいのつもりだった筈なのだ。
「でも、もうすぐ上がり、すね。僕だけ先に上がるの、悪い……申し訳ない?です」
「って言っても15分じゃない」
「そうだけど……いや、そうですけど」
彼は18歳以下の年齢になってしまうので、店長の慎重な性格によってどんな時もきっちり15分前にはあがるようになっているのだ。
それを毎回申し訳なさそうに言うのだが、私も次の夜勤の人が早めに来た時などは一緒に上がれたりするので、気にする事でもないのだ。
それに、そうやって皆早めに来る事によって全体が回っているのでお互い様だ。
「それと、私に対してきっちり敬語喋ろうとしなくてもいいよ?神崎くん敬語苦手でしょう?」
下手なフォローはせずに、慣れていない喋り方を指摘する。

