二人頷いている所に水を差すように反論すれば、莉子ちゃんは悪戯めいた笑みを見せ、三咲ちゃんは目を丸くした。
「瀬戸ちゃんは優しいな~~、たとえそうなったとしても誰も責めないんだ?」
「そうだね。自分が至らなかったのかも、とは思うだろうけど」
実際そんな出来事に直面しているわけではないので、机上の空論のようなものだろう。
直面したとき私はどうするのだろうか。きっとそれを考える事もまた、同じように馬鹿げた話だ。
「それに、モテるのも知ってるし大丈夫だよ。心配してくれてありがとね、莉子ちゃん」
完結させるように締めくくってみればまた、彼女は否定するのだ。
「心配とかそんなんじゃないよ。世の中にはいい人間ばかりじゃないって話をしたかっただけなんだよ」
と、あくまで自分の意見を押し出しただけだと。
「……やけに捻くれてるな、莉子は。どんな悪い人間に直面して来たんだよ」
「んふふ。私の周りは皆いい子ばっかりだからそんな事はないんだけどね」
「結局からかうのが好きなんだな。タチの悪い」
呆れたように溜息を吐いたところで莉子ちゃんは軽い調子で「ごめんごめん」と謝るだけだ。
次いで、頭を捻り気になる事をポツリと言う。
「……でも、私あの男の子の事どっかで見た事ある気がするんだよなぁ」
「どこだっけ、記憶力はいいほうなんだけどな」と小さな声で呟きながら考えるも、その間に講義が始まりを告げてしまい、答えに行き着くことは無かった。
「ごめんね!気のせいだろうから気にしないで!」
そうして謝りを入れられて、この話は他愛のない話として終わりを迎えたのだった。

