神様には成れない。




「い、た……」


膝を強かに打った為に、反射的に声に出してしまう。


「ごめん瀬戸さん!受け止めきれなくて!大丈夫?!」


過敏に反応する淵くんは真っ先に私を心配してくれる。

私が勝手にバランスを崩して、手を繋いでいた為に彼は道連れになったのに最初に自分の非にしてしまう。相手を責める事なんてしない。

彼だって咄嗟に私を支えようと、体勢を崩して一緒になって何処か体をぶつけているはずなのに。

私が悪いと責めたって、鈍くさいと罵ったっておかしくもないのに、只管に優しい。

そんな優しさが


「いたい……」

「何処痛い?立てる?」


足なんてどうだっていい。胸が痛い。心が痛い。


「っ~~」


胸元の服を握りしめる。

訳も分からず履かされたこの靴は結果として彼に触れるきっかけを作ってくれて、もしかすると御伽噺にあるみたいな、京ちゃんなりの魔法だったのかもしれない。

しかし、次にそれはそんな事で浮かれた愚かな私に牙を向いたのだ。

でもそうだ。彼に会うために自信が欲しいなんて、勇気が欲しいだなんて、そんなのこの気持ちを肯定させるのと同意義なのだ。

心の底では、抑える気なんてきっとなかった。

抑えるなんて出来る筈なかったのだ。


「瀬戸さん?」

「……き」

「え?」

「――好きなの。淵くんが」


境界線からやっと手を伸ばせた。