彼が付き合っていた彼女への想いを聞いて羨ましかった。苦しかった。
莉子ちゃんに言われた言葉を聞いて、取られたくないなんて明らかな独占欲だった。
今日だって彼の前で男の子を紹介する話を出されて、彼に変な誤解を持たれる事を恐れた。
とっくに吐き出してもいい筈だったのだ。
「瀬戸さんが俺を俺として意識してるなら言ってよ」
迫るように言われて、息が詰まる。
そうやって彼が私を求めてくれるのなら、言ってしまってもいいのだ。受け入れてくれるというのなら。
「淵くん……」
震える声を振り絞り、顔を上げる。
黒い瞳は、また星を吸い込んで輝いているように見えた。
「私……っ」
応えたいと心の内を引き上げようとしたのに、最後の最後で私に残る羞恥心が邪魔をした。
「こ、こんな所で言えないよ……っ!」
外で、誰が見ているか聞いているか分からないような場所で言えるわけないと、一歩後ろに引いた。
だけど、互いに繋いだ手によって距離は開かない。

