神様には成れない。




今まで頑なに拒む様にしてきていた彼だから、あの夜の話を聞いてから私は線を引き直したのに。

いや違う。引き直したつもりだったのだ。

これだけで揺らいでしまう線などなかったも同然だ。

でも、それでいいのだろうか。彼はそれで困らないだろうか。

好きと言うのが分からないと何度も口にしていたのだ。

最初は私の気持ちなど求めていなかった。彼だって応えられないと決めつけていた。

それが変わったと言うのなら、ほんの少しでも最初の前提が達成されつつあると言う事なのだが、また彼は苦しまないだろうか。


「っ、淵くん」


だって、こんなにも私は彼に触れたい。

繋がれた手に自分の空いた手を重ねた。


「俺さ、この間の夜の事がずっと忘れられなくて」


彼もまた同じように手を重ねる。互いが互いの手を繋ぎ合って雁字搦めになるようなそんな感覚に襲われる。


「――やっぱり、瀬戸さんに好きって言われたい」

「っ、っ~~!」


懇願するように言われた言葉に私は吐き出してしまいそうになった。