手は震えていないだろうか。声はちゃんと出せるだろうか。
意識しないでいられるのが一番だ。
「瀬戸さん手冷たいね」
「そう、かな。淵くんは温かいね」
「んーん、そうじゃなくて。普段は瀬戸さんの方が温かいから今日は冷たいなって。俺多分体温高い方じゃないからさ」
「っ、」
“普段”と言えてしまうほどに手に触れていることを示され、意識してしまい指先に力が入る。
落ち着かない胸の高鳴りは、以前繋がれた時のそれとはまた種類が違う。
これは、ただの善意だと言い聞かせても私が言うことを聞いてはくれない。
覚束なかった足は、彼が支えてくれている事により確かに地に着いているのにまだふらつくような気がした。
「あ、ちょっと温かくなってきた」
クスクスと笑いながら、指と指を絡めて繋ぎ直す。
彼と手を繋ぐときはいつもこんな風に繋ぐ。彼の癖なのだろうか。
他の人が見れば、殆どの人が恋人だなんて思うだろう。
友達同士はこんな風に手を繋いだりなんかしない。
「ふ、淵くん。何度も言うけどあんまり誤解されるようなことは」
「しないほうがいいよって言うんでしょ」
先回りするように、言葉を遮る。彼自身も痛いほどに分かっている筈だ。
何度も何度も繰り返して、悩んでいる筈だ。
それなのに何度も何度も繰り返されてしまうと、私が誤解をしてしまうのだ。
「――でもさ、誤解でも何でも瀬戸さんが俺の事好きになってくれるなら、それもいいかなあって」
「!!」
どうして彼はここにきて受け入れようとするのだろうか。

