一連の話を聞いた以上、無かったことには出来ない。故に今更ながらの空想の話。
けれど、もしかすると変な告白に、ただただ浮かれる私だっていたかもしれない。
それが初めから恋愛感情がないにしろ、私が受け取った告白は恋愛絡みに感じていたと彼だって気付いていたはずだ。
だって、先回りするように好きだと口走ったのだ。
「それはそれとして、ちゃんと付き合ってたよ。普通にデートして、同じ時間を過ごして、同じものを見て、同じものを食べて。そんな風に」
「――……」
酷いことを言っているのに、彼は何処までも純粋な人だ。そう、感じてしまった。
あったかもしれない空想の世界に想いを馳せているその姿は、蔑ろにしているわけではなく、口元を僅かばかりに緩めて楽しんでいるように見えたのだ。
だからこそ解せない。
「でも、淵くんはその……えと……付き合いたいとかそう言う感覚はないんじゃないの?」
口にするのも恥ずかしく、本当に言いたかった事を見えなくしてしまうほど濁して、オブラートに言葉を包む。
それでもその言葉の意図する事は私の様子で分かるらしい。
「ん〜〜、確かにその感覚はないけど、そう出来ないわけじゃないよ」
「なら、淵くんはそうなっても良かったの?」
「まあ、そうだね。俺は瀬戸さんの事間違いなく人としては好きだし。……瀬戸さんが嫌な思いするって点だけは問題だけど」
どうしてそこで私を気遣うような発言をするのか。
もしかすると彼は賭けたのかもしれない。私の出す結論に。どう転ぼうとも受け入れる事が出来るからと。

