鞄のチャックを閉じて右手にスマホを持ちかえる。

お昼の時間帯は学校が違えども、大きい違いが無いとは思うので今電話を掛けても迷惑とはならないだろう。

そう考えて連絡先を呼び出してみるもボタンを押すのに勇気がでない。


「う~~……」


再び唸りを上げて、先にご飯を食べて問題を後回しにしようかと思い始めていた時


「せーーとちゃん!」


肩と肩が強くぶつかる勢いで隣に人が座ってきたため


「きゃあ!?」


激しく体が揺れた動きで操作を誤り、発信ボタンを押してしまった。

微かに聴こえる数回鳴る短い音の後には接続音。


「つな、繋がっちゃっ……!」


今切った所で履歴として相手に通知が届いてしまう。

切ることも、スマホを耳に当てる事も出来ずに、心の準備が出来ていない私は混乱に陥る。


「ありゃ?どうしたの?凄い顔して」


あたふたとしている間に時間は経っていく。

左隣では呑気な声が聞こえてくるけれど、手元からは


『もしもし?瀬戸さん?』


彼の声が聞こえてきていた。