神様には成れない。



「簡単に言うと人が死ぬとき、その人の肉親が迎えに来てくれて一緒にあの世まで行ってくれるんだって」


さらりと告げられる話は信憑性も不確かな事で。それでも彼はそれを信じるように空を見上げてきらめく星をその瞳に映す。

何かに想いを馳せているのか、いないのか。知る由もないけれど瞳には力が宿っている気さえした。


「結構それが俺にとって衝撃的な話でさ、読んだ瞬間、何でか瀬戸さんが思い浮かんだんだ」

「それで」


こんなことになっているというのか。なんとも


「短絡的……っと」


ポロリと言葉が滑り落ちてしまい慌てて口を塞いだ。が、遅い。

真横にいるのだから聞こえているに決まっている。


「ははっ、そうそう。自分でも短絡的だとは思うよ。でもね、瀬戸さんが迎えに来てくれるなら死ぬのも怖くないなぁって、本気で思ったんだよ」


嫌みともとれる言葉をも押し退けて淡々と大きな事柄を告げてくる。

何とも怖い話をしているのに、少しだけ鼓動が高鳴るのは好意的ではある言葉だからなのだろうか。

そこに恋愛対象として好きと言う感情が乗っていなかったとしても。だ。


「って、そもそも淵くん病気持ちとか死が迫っているとかって言う訳じゃないでしょう?」

「うん、そうなんだけど」

「それに、その話の通りなら肉親なんだから私は迎えにいけないし、不謹慎だけど淵くんのご両親とかなんじゃ……」

「んーーでも普通に人間の寿命を考えれば両親の死後数十年後に俺が死ぬわけでしょ?そんな年数まで生まれ変わらないで俺を迎えに来るなんて申し訳ないなって」


困ったように笑い、悩ましげに考える。

対する私もどんな表情を向ければいいかも判らずに、ただただ黙り込む。

全部が全部信憑性のない話で、今から考えても仕方がない話だ。

それなのに、何故、どうして、こうも真剣に彼は捉えているのだろう。