神様には成れない。




「……」


ショックだったとか衝撃を受けたとかはなく、ただ言葉を事実として受け入れている客観的な自分がいた。

そもそも、恋愛的感情が分からないと、好意が怖いと言うのだから何処かでそう思う瞬間があっても何らおかしくはないのだ。

それでも何故、恋が分からないなどと言うのだろうか。


「その子の事、好きだったんじゃないの?」


問いかけると、キュッと胸が締め付けられる感覚がした。

答えに言い淀むかのように呼吸を一つする間が生まれる。

それでも言い淀む答えを更に濁すことはなく、彼の持つ回答が成された。


「――……好きだったよ。好きだと思ってた」

「そう」


短く頷きを返して手の力を緩め、彼とまた正面から向き合おうとした。

離れてきちんと顔を見ようとした。


「っ、」


なのに、他でもない彼が引き止めるかのように私の服の裾をわずかに掴んだのだ。

行かないでと引き止める子供の様に。