神様には成れない。



自分自身に落胆したかのように肩を落とす。

そして言うのだ。


「瀬戸さんに好かれるなら、俺は嬉しいよ。それは嘘じゃない。でもね、女の子に好かれる事が嫌で嫌で仕方ないんだよ、本当は」


“私”と“女の子”

彼の中に分類があるかの様に言う。表裏一体な筈なのに、別々だとでも言うのか。

別々だと言うのなら、“私”に好かれるのはよくて“女の子”に好かれるのが嫌だと言うその言葉は相いれる事はない。

矛盾は一つになれない。

彼のちぐはぐな行動の根は其処にあった。

だから私と言う女の子と接するように予防線を張る。だから私自身と接する時に予防線を超える。


「……」


けれど、彼は言ったのだ。私の事が人として好きだと何度も言ってくれた彼の口から“私の事を好きになりたい”と。

それは歩み寄ろうとしてくれている証拠で。けれど、彼自身が境界線を決めている為に飛び越えれなくて。


「――淵くん」


矛盾が一つになれないのなら、それ事抱きしめてしまうのはどうだろう。

目の前で私を見てくれている彼を信じて。