神様には成れない。



彼は問いかけに顔を上げて私と目を合わす。

揺らぐこともない黒い瞳は、私だけを映していた。


「瀬戸さんは、気にしてほしい?」


問いを問で返されてそう言う問題ではないと言いたくなるも、開く口が一度閉じる。

彼が求めている答えは何なのか。何を探しているのか。

私に正解を見つけれるはずがない。

ただ分かるのは少なくとも彼には何の気もなく、この質問でさえ愚問だったという事だった。

言葉に詰まっていると、彼は眉を下げて笑う。


「……ずるい事聞いたね。気にしてほしいなんて言われたら俺は返答に困るのに」


その言葉の意味する所はやはり、あの時にまだ一緒に居たいと言った事にあるのだろう。

安堵の表情を浮かべた淵くんが思い起こされる。

それでも彼は私をこの家に引き入れたのだ。矛盾している。

矛盾を解き明かすにはまた一歩踏み込む必要があった。

少なくとも今の言葉を発した彼と安堵の表情を見せた彼は一貫性がある。私は一つの疑問を持つしかなかったのだ。


「淵くんは、もしかして私に好意を持たれるの嫌?」


私の疑問は殆ど正解に近かったのか、淵くん驚いたように目を見開いた後に視線を下に向けた。


「そんなことない。瀬戸さんに好かれるなら、俺は嬉しいよ」


俯いてしまった彼の表情は見えなくて、返答に困惑が混ざっているのだけは感じ取れた。