「じゃあ、俺もそのひとりってことか」
「まあ、そうなんじゃない、知らないけど」
どうしてスミくんが私のことを好きだと言って、付き合おうと言ったのか、そこが一番よくわからない。
こうして接する限り、この人が私のことを恋愛対象として好きだとは到底思えないし、それ以外の理由で私に近づくメリットもない。考えても八方塞がりなのだ。
「そういう男子たちと一緒にされるのはなんか癪だな」
「アンタが一番意味不明」
「んー、俺はナツノと話をしてみたかったって前に言ったけど」
「だからそれが意味わかんない」
「でもさ、初めて喋った時は愛想が良くてよく笑って、取り繕った笑顔ばかり見せてたけど、今はずっと眉間に皺がよってる」
「それが何、てか接続詞おかしくない?」
「だからさ、そういうのが見たかったんだよね、って話」
「あのさ、アンタの話は脈絡がなくて本当に意味がわかんないんだよね!」
「アンタじゃなくて、スミって呼んでよなー」
「そこじゃない」
けらけらとスミくんが笑う。なんなの、本当に、何がしたいんだこの人は。
「ていうか時間やばいからちょっと真剣にやるよ」
「私はここで水を流すだけの係なのでー」
「ハイハイ、今日は俺がやりますよっと」
来週からはその態度許さないからなー、とスミくんは少々不満そうにモップを動かし始める。私はチョロチョロとホースからプール底に水を撒く。
日があたったスミくんの髪は透き通ってきらきらと光ってみえる。茶髪はきっと地毛だろう。自分から校則を破って染めるタイプとは思えない。綺麗な髪質。それに、男子のくせに、長い睫毛だ。羨ましい。