「ナツノ、やる気ある?」


あるわけないでしょ、と心の中で悪態をつきながら、眉間に皺を寄せて彼を視界から外してやる。さっきからこうして無視を決め込んでいると言うのに、この男は何も気にしない様子で普通に話しかけてくる。無視、という概念を知らないのだろうか。



「まあナツノにやる気なんてあるわけないか」



水を抜いたプールの中に降り立ってせっせとモップで床を磨くスミくんと、プールサイドに座り込んでホースから水を流すだけの私。


「1週間に1日この作業が続くなんて結構罰ゲームだなー」



5月と言えど日差しは眩しい。あと、スミくんの独り言は煩い。



「ハー、相方がこれだと当分任された区域が終わるわけないよなー」

「……」

「担当区域が終わらないと1週間に1日どころか、最終週は毎日掃除のペナルティがつくらしいなー」

「え、」

「ん?」

「……ウザ、引っ掛けた」

「別に引っ掛けてないけど? ペナルティがつくのは本当の話。さっき先生の話聞いてなかったの?」



ちゃんと聞いておけばよかった。にやりと笑うスミくんは、やっと返事したなーとこぼす。不本意だ。



「……担当区域ってどこまで」

「プール底1番端のレーンと、女子更衣室のロッカー拭き、外階段のゴミとり」

「結構重いじゃん」

「紙配られただろ、見てないの」

「見てない、捨てた」

「……ナツノ、意外と不真面目だなー」

「意外でもないでしょ」


他人から見た自分の評価なんて肌で直接感じるものだ。周りからの自分の見え方が心底悪いのなんて百も承知。