早川 駿 （ハヤカワ シュン）１７歳。乙女座のB型。身長１７８センチ、視力両目２.０。趣味は写真を撮ること。嫌いな食べ物はピーマンと茄子。無駄に整ったルックスのおかげで好きになる女子は後を絶たない。けれど天然鈍感無神経の三拍子を備えたオトコのオの字もないような奴なので、高校三年生になっても未だ彼女はナシ。
ーーなんて、幼馴染のプロフィールをいきなり述べるのもどうかと思うんだけど。
「なに、さっきから」
「んーん、シュンってほんと顔だけは整ってるなあって思って」
「顔だけ、ね」
少しだけむすっと顔を歪めたけれど、シュンの反応はいつもそれだけだ。あとは背中を丸めてじっと黙り込む。その視線の先には、テーブルに並べられた沢山の写真がある。自分が撮った写真たちをどれがいいかと吟味しているんだ。
猫背、いつまでたっても治らないね、シュン。
「ねーえ、コンクールにでも出すの？」
「出さない」
「ちえ、まーた不参加かあ。折角こんなにいい写真ばっかりなのに」
写真部の狭い部室、教室の真ん中に置かれた大きなテーブル。そこに広げられた沢山の写真たち。
夜になっていく夕方、雨に濡れた紫陽花、あくびをする黒猫、公園の砂場に残された誰かのバケツ。
一枚一枚手にとって吟味するシュンを横目に、わたしも適当に手にとっては下ろしてゆく。そのどれもが綺麗で儚くてうつくしい。
何気ない一瞬を捉えるのがシュンはひどく上手だ。わたしは写真になんて決して興味はないけれど、シュンが映し出す写真にだけはどうしても惹かれてしまう。
「だめだ」
「ダメ？」
「うん」
「なにがダメなの？」
「……まだ、ダメだ」
シュンはそう言って、テーブルに広げた写真を今度は一枚一枚重ねていった。全部重ね終えると、その束を輪ゴムで縛ってポイっと放り投げる。この部室には、そんな風にして束ねられた写真たちがごろごろと転がっている。
