セントラル・パークを出て大通り沿いを歩きはじめてから、彼は思い出したように立ち止まった。
「そうだ。パスポートある?」
空港にでも行くつもりかな、と思いつつ、私は首にかかっていたゴールドのチェーンをずるずると引っ張り上げた。服の中から出てきたパスポートケースを取り出してみせる。
「Awesome!」
目を見開いて、おーさむ、とつぶやいた彼に「えっ?」と聞き返す。
「上出来!」
日本語で言い直して、彼はくしゃっと笑った。
「身分証明書がないと、この国じゃなにもできないから」
それからそのまま盛大なくしゃみをする。

