彼は穏やかな目で私を見下ろすと、着ていたコートを脱いで私の肩にふわりとかぶせた。遠くの空を見て、静かな声を出す。
「もう暗くなってくる。泊まってるホテルはどこ? 送っていく」
打って変わって真面目な顔をする彼に、私は小さく首を振った。
「……まだ、いい」
「あのな、ここは日本とはちがうんだよ。この公園だって昼間は比較的安全かもしれないけど、暗くなったら――」
「わかってる。……出口だけ教えて。もうすこししたら、自分で帰るから」
「もうすこしって……」
「せっかくひとりになれたんだもの。もうすこし、このままでいたいの」

